- 最近のデジタル補聴器はICチップ(プロセッサ)の高性能化とともに、様々な機能が進化しています。
- 補聴器の価格差は、ICチップに書き込まれた処理能力、つまり、補聴器に搭載されている機能、性能の違いにより変わります。
- デジタル補聴器のおもな機能です。
- マルチチャンネル信号処理(音を分割して処理する機能)
- ノンリニア増幅処理(音を最適に調節する機能)
- 雑音抑制処理(雑音を抑えて聞き取りやすくする機能)
①定常雑音、非定常雑音を低減する機能(会話と関係のない高さの音を取り除く機能)
②指向性機能(会話と関係のない方向の音を取り除く機能)
③衝撃音低減機能(衝撃音を取り除く機能)
④風雑音低減機能(風切り音を取り除く機能) - ハウリング抑制処理(不快な音を取り除く機能)
- ワイヤレス(無線)機能
1.マルチチャンネル信号処理(音を分割して処理する機能)
- 補聴器に入力された音を複数の周波数帯域のチャンネル(バンド)に分割した上で、各種の信号処理とその増幅をチャンネルごとに行う処理で、デジタル補聴器の基本的機能です。
- 補聴器に入ってきた音を音の高さ(周波数帯域)ごとに分割(マルチチャンネル)し、分割されたチャンネルごとに独立して音の処理を行い、最後にそれらを統合することで、音を聞きやすくしたり、雑音を取り除いたりします。
- チャンネルやバンドは、分割する数のことです。
- 8チャンネルは、音を8つに分割して処理をします。
- 入ってくる音を細かく分割して処理すると、その周波数帯域(音の高さ)に入っている雑音を消すなどの処理にきめ細かく対応できるため、音をクリアにすることができます。
- 一般的には、チャンネル数が多くなるほどきめ細かな処理が可能になるため、高額になります。
2.ノンリニア増幅処理(音を最適に調節する機能)
- 補聴器には、音を聞きやすい大きさに調節することが求められます。
- 難聴には、伝音難聴、感音難聴、それらの複合の混合難聴がありますが、補聴器が一番必要とされるのが感音難聴です。
- 感音難聴では、ようやく聞こえる音からうるさいと感じる音までの幅(ダイナミックレンジ)が狭くなります。
- ダイナミックレンジは、難聴が高度になるほど狭くなります。
- 難聴によって狭くなったダイナミックレンジ(聞こえの範囲)のなかで、より広い範囲の音を聞くことができるように音を圧縮・増幅させることをノンリニア増幅(WDRC:Wide Dynamic Range Compression)と言います。
- 大きな音はわずかに、小さな音は大幅に大きくするなど、音によって増幅の幅が一定ではないことから、ノンリニア増幅と呼ばれています。
- ノンリニア増幅は、音の入力レベルが低い場合に利得(音の増幅量)を高くすることで、小さな音の聞こえの改善が見込め、入力レベルが高い場合には利得を低くすることで大きな音のうるささの改善が見込めます。
- 感音難聴の聞こえに対応するために、補聴器は小さな音の増幅は十分に行い、大きな音の増幅は出力が大きすぎて不快にならないように適度に抑えた増幅が求められます。
3.雑音抑制処理(雑音を抑えて聞き取りやすくする機能)
最近の補聴器の機能で最も進化したのが、雑音を抑制する機能です。
難聴者の言葉の聞き取りを優先するための雑音抑制処理(ノイズリダクション)はデジタル補聴器の代表的な機能です。
1.定常雑音、非定常雑音を低減する機能(会話とは関係のない音を取り除く機能)
- 音の強さの変動が少ない雑音を定常雑音と言い、音の強さの変動が大きい雑音を非定常雑音と言います。
- 定常雑音には、エアコンの音、乗り物内の走行音、人が多い広い空間の雑踏雑音などが、非定常雑音には、交通騒音や機械音などが該当します。
- 人間の耳は、大きな音があると小さな音が聞こえにくくなってしまうというマスキングという性質があります。
- 難聴者の場合は耳の感度が悪くなるため、大きな雑音があるとその雑音の高さだけではなくほかの高さの音まで聞き取りにくくなります。
- 雑音部分を抑えることで音のにじみが少なくなり会話が聞き取りやすくなります。
2.指向性機能(会話と関係のない方向の音を取り除く機能)
- 特定の方向からの音を優先して聴取するしくみを指向性機能と呼びます。
- 複数のマイクを用いて音源の方向を認識し、それが会話音か雑音なのか区別し、会話のある方向からの音だけを拾います。
- 指向性機能により特定(通常は前方)の音がよく聞きとれるようになり、それ以外の方向からの音(主に雑音)が抑えられます。
- 指向性機能は前方の音を優先的に増幅し、前方以外の音を低減させることで、周りに会話や雑音があっても正面の人の音声を優先的に聞き取りやすくします。
- また、マルチチャンネル信号処理(音を分割して処理する機能)やノンリニア増幅処理(音を最適に調節する機能)と併用することで、周りに会話や雑音がある環境でも、全方向の雑音と正面以外の会話音が低減され、正面方向の相手の音声を最優先で聞き取ることが可能になります。
3.衝撃音低減機能(衝撃音を取り除く機能)
- 補聴器を使い始めた難聴者が、どのような音を不快に感じるかを調査した結果、モノを叩く音、壊れる音、泣き声、食器・紙を扱う音などの瞬間的に立ち上がる音や刺激的な衝撃音に不快さを感じるとの結果が得られました。
- この不快感を取り除くために、刺激的な衝撃音のピークレベルを抑制する機能が衝撃音低減機能です。
- この機能により、補聴器の長時間装用による疲労を軽減し、心地よい装用が図れます。
4.風雑音低減機能(風切り音を取り除く機能)
- 補聴器は様々な屋外環境でも使用されるために、風に当たった場合に風切音も増幅してしまい、うるさく聞こえてしまうことがあります。
- 風切音が発生してしまった時に、その発生を確実に検知して、取り除く機能が風雑音低減機能です。
4.ハウリング抑制処理(不快な音を取り除く機能)
- ハウリングとは、補聴器がずれたり、帽子をかぶったりすると、補聴器から「ピーピー」と聞こえる音のことです。
- ハウリングは、補聴器から出た音を再び補聴器のマイクが拾ってしまい、音が循環して起こる不快な音です。
- ハウリングは、補聴器から漏れる音が元の音よりも大きいときに起こります。
- ハウリングを抑制する処理をハウリングキャンセラーと呼びます。
- 補聴器はハウリングキャンセラーの進歩により、ハウリングをうまくコントロールすることが出来るようになりました。
5.ワイヤレス(無線)機能
- デジタル補聴器の新しい機能であるワイヤレス(無線)機能を利用することで、補聴器をより便利に効果的に使うことができるようになっています。
- リモコン機能は、補聴器の使用者が操作する機能を無線で行う機能です。
- 両耳間通信制御は、両耳に装着した2つの補聴器間で通信を行い、動作の同一性を制御する機能です。
- ダイレクトストリーミング機能は、テレビ、電話、音楽プレーヤーなどの音信号を補聴器が直接受信できる機能です。
- ワイヤレス(無線)機能により、補聴器使用者の生活の利便性が大幅に改善しています。
補聴器・聞こえについて
- 補聴器の機能
- スマートフォン対応補聴器
- 耳鼻咽喉科に行くメリット
- よい補聴器の選び方
- 補聴器を買うときの注意点
- 補聴器に慣れるまで時間がかかる理由
- 補聴器を使っている人との接し方
- 補聴器の扱い方
- 補聴器の維持・管理
- 補聴器のトラブル
- 電池
- 充電式補聴器
- 補聴器の購入補助・助成制度